おれの親父

 今年58歳です。1年くらい前、かあちゃんと買い物に行った時CD屋さんで、かあちゃんが河島英吾のCDを手にとって「おとうさんに買って帰ろうかな〜」と言っていました。「なんで?」と聞くと「何年か前、会社の関係で河島英吾の唄を聴く機会が遇ったらしく、それを聴いておとうさんなんかジーンときたみたい」と言っていました。『酒と泪と男と女』『時代おくれ』の中に長年勤めてきたサラリーマン背景と共感して、若いおれらにはわからない感慨深いものがあったのでしょう。気持ちはなんとなくつかんでも、真の意味でわかるのはおやじたちではないでしょうか。歌詞にかぶる長年の苦労が、親父の背中にじみ出ている気がしました。いろいろ思い返すと親父も一人の人間であり、むかついたりもしたけれど、基本的に優しく、正しい判断をする人であります。いろいろ苦労かけて大学にまで行かせてもらった親父です。最近、ばあさんも病院にいっしょに行った時に待合室で親父が「東京で働いてる時なぁ、取引先に毎日謝りに行ってて壁にもたれた時、間違って防火シャッターのボタンを押してしまって、みんなオフィスで仕事してるのに、ウィーンとシャッター閉まりよるんや!みんな暗くなるしびっくりしてたわ〜!あんときはしまった〜と思ったねぇ!謝りに行ってるのに余計に怒られたしなぁ」と笑いながら話してくれました。
 病院のばあさんの薬に治験と呼ばれる、薬の効果をはかる実験みたいなものを薦められて、おれが「ふざけんなって、いま普通に処方する薬も使わんし効果もわからんのに、実験の薬を初めから使うなや!病院の金儲けのために処方させるんか!医者に文句言ったろか!」というと親父が「使いませんって言ったらいいだけのことやろ?」と言いました。たしかにその通り。なんか冷静になった瞬間でした。まだまだ親父にはかないません。
 世間の家族を守っているおやじ、なんかすごいっす。おれの親父もなかなかかっこいいくないですか☆